仕事に家庭にと、効率や正解ばかりを求められてきた私たちアラフィフ世代。
ふと肩の荷が下りたとき、「自分のためだけに使える時間」の使い道に戸惑うことはありませんか?
最新のロードバイクをお金で買うのは簡単です。でも、今の私たちが本当に欲しいのは、スペックの高いモノではなく、「何かに夢中で没頭する時間」そのものなのかもしれません。
これは、メカ音痴の50代が、メルカリで見つけた1本の古いフレームと格闘し、自分だけの「最高の相棒」を作り上げるまでの半年間の記録です。
自分好みに仕立てた自転車は、驚くほど体に優しく、これからの人生を豊かにしてくれます。
運命の出会いは「1万4千円」の鉄フレーム
ことの始まりは、フリマアプリ「メルカリ」でした。
画面の中に、どこか懐かしい佇まいのフレームを見つけたのです。
- 車種: 丸石(Maruishi)のシクロクロスフレーム
- 素材: クロモリ(鉄)
- 価格: 14,000円
カーボン全盛の時代に、あえて重たい鉄のフレーム。「安い!」という衝動もありましたが、それ以上に、その細身で武骨なシルエットに「軽くないけど、乗り心地はいいよ」という自分好みのオーラを感じました。
ポチっ。
ここから、私の半年間にわたる「大人のプラモデル」作りが始まりました。
整備士の資格もなければ、詳しい知識もない。あるのはメンテナンス本と、老眼になりかけた目と、情熱だけ。
それでも、「自分の命を預ける乗り物を、自分の手で理解したい」という欲求が勝りました。
「既製品にないなら作ればいい」ホイール手組みへの挑戦
パーツ集めは、予想以上に困難で、そして最高に楽しいパズルのようでした。
特に頭を悩ませたのが「足回り(ホイール)」です。
50代のサイクリングにおいて、最優先すべきは「速さ」ではなく「快適性」。路面のガタガタを拾わないよう、35Cくらいの「太いタイヤ」を履かせたいと考えました。
しかし、ここで古いフレーム特有の壁にぶつかります。
「130mmエンド」のジレンマ
このフレームの後輪を取り付ける幅(エンド幅)は「130mm」。これはロードバイクの規格です。
市販されているロード用ホイールは、細いタイヤ(〜28C程度)で速く走ることを前提に作られており、私が履きたい太いタイヤに対応していませんでした。
- 理想: 太いタイヤでフカフカの乗り心地にしたい
- 現実: 対応する完組ホイール(既製品)が売っていない

やっぱり無理なのか……
諦めかけた時、ふと思いました。



売っていないなら、組めばいいじゃないか
と。
ハブ、リム、スポークをバラバラに買い、自分で編み上げる「手組みホイール」。
ハードルが高いことは百も承知です。YouTubeで職人の動画を何十回も再生し、ミノウラの振れ取り台(ホイールの歪みを取る台)まで購入しました。
苦心の末に選んだパーツ構成


結果として、以下の構成で「130mm幅でも太いタイヤが履けるホイール」が完成しました。
| 品目 | 品名・規格 | 価格(当時) | 選定の理由 |
| リム | ARAYA TX-733 | 5,961円 | 信頼の日本ブランド。頑丈さが魅力。 |
| ハブ(後) | シマノ FH-RS400 | 2,388円 | 耐久性重視のティアグラグレード。 |
| ハブ(前) | シマノ FB-TX500 | 1,230円 | 安価だが回転はスムーズ。 |
| スポーク | 星ステンレス | 5,918円 | 定番中の定番。折れにくい。 |
| タイヤ | IRC METRO | 5,698円 | 街乗りに最適なタフなタイヤ。 |
| 合計 | 約2.4万円 |
持った瞬間は「重っ!」と感じました(笑)。
しかし、この重さは「安定感」と言い換えることもできます。軽さを競うレースに出るわけではありません。どっしりと地面を捉え、安心して体を預けられる。それが私たち世代には必要なのです。
失敗こそがDIYの醍醐味(クランクとBBの干渉)
順調ばかりではありません。クランク(ペダルを漕ぐ部分)の取り付けでは、盛大に失敗しました。
手持ちのロード用クランクを取り付けようとしたところ、フレームのチェーンステイ(後輪へ伸びるパイプ)に接触して回りません。
このフレームは太いタイヤを履けるよう、パイプが外側に張り出していたのです。


ロード用のホイールしか入らないのに、ロード用のクランクは付かない・・・なんとも偏屈なフレームです。
でも、そんな一筋縄ではいかないところも、なんだか人間臭くて愛おしくなりませんか?
結局、BB(ボトムブラケット)という軸のパーツを何度も買い直し、長さを調整してようやく解決。異音が消え、スムーズに回った瞬間の達成感は、仕事でプロジェクトを成功させた時とはまた違う、純粋な喜びでした。
かかった費用と「大人の分別」
最終的にかかった費用は、約58,000円。
(※一部手持ちパーツを流用。工具代は含まず)
1.4万円のフレームが、立派な一台に生まれ変わりました。
ただし、ここで一つだけ**「大人として譲ってはいけない線」があります。それは「安全性」**です。
素人が組んだ自転車がいきなり分解したら、自分だけでなく他人を傷つける可能性があります。
組み上がった後、私は迷わずプロショップへ持ち込みました。



よく組めてますが、ヘッドパーツ(ハンドルの軸)がちょっと緩いですね。締め直しておきます
プロに見てもらったという「安心感」は、何万円もの価値があります。
「自分でできることは楽しみ、命に関わる部分はプロに頼る」。このバランス感覚こそが、長く趣味を楽しむ秘訣だと感じました。
試走:三浦半島の風と「クロモリ」の優しさ
完成したバイクで、三浦半島へ走り出しました。


重量は11.4kg。最近のロードバイクに比べれば決して軽くはありません。
しかし、ペダルを漕ぎ出した瞬間、その数字はどうでもよくなりました。
「柔らかい……」
以前乗っていたBASSO レスモ(同じくクロモリフレーム)のような、路面の段差がガツンと腰に響く感じがありません。太いタイヤのせいか、衝撃や振動を優しくいなしてくれるのです。
海沿いの道を、時速20kmくらいのんびりと流す。
速く走らなくても、風は気持ちいい。
景色を楽しむ余裕がある。



ああ、これこれ!
と、心から思えました。
誰かと競うのではなく、自分のペースで、自分の作った自転車と対話しながら進む。これこそが、50代からの自転車ライフの正解ではないでしょうか。
まとめ:不完全な自分と、不完全なバイクを愛する


中古のフレームを拾い上げ、知恵を絞り、手を汚して組み上げた一台。
最新の高級車にはない「隙」や「重さ」がありますが、それがかえって愛着を深めてくれます。
もしあなたが、「最近なんだか退屈だ」「体力の衰えが不安だ」と感じているなら、一度「手間のかかること」に挑戦してみてはいかがでしょうか。
いきなり一台組むのはハードルが高いかもしれません。
まずは、今の自転車のグリップを変えてみる、タイヤを太くしてみる。
そんな小さな「自分仕様へのカスタム」から始めてみてください。
きっと、単なる「モノ」が、あなたの人生を応援してくれる「相棒」に変わる瞬間が訪れるはずです。
[あなたのクロスバイクも「自分仕様」にしてみませんか?]
私がその後、さらに快適さを求めて試行錯誤した「ハンドル交換」の記録もぜひご覧ください。肩の力が抜けて、もっと楽に走れるようになりますよ。


