Zwiftを続けているのに、FTPがまったく動かない。そんな停滞に悩んでいたわたしが、「ゴルビー(Gorby)を20回やればさすがに何か変わるはず」と思い立って実験した記録です。
結論から言えば、FTPは215W → 232W、17W上昇しました。ただし、達成率40%という厳しい現実も含めて、すべてお伝えします。
(215W → 232W)
総セッション数
完走率
完走できた回
ゴルビー(Gorby)とは?Zwift最凶ワークアウトの構造
「Gorby」はZwiftに収録された1時間のワークアウトです。一見シンプルですが、やれば「地獄」だと分かります。
正式な別名は「The Quitter」——脱落者
| ウォームアップ | 10分(30% → 80% FTP) |
| メインセット | 5分 @ 110% FTP + 5分 @ 55% FTP ×5セット |
| 合計時間 | 1時間 |
| Stress points(TSS) | 81 |
| ゾーン分布 | Z1 31分 / Z2 3分 / Z3 1分 / Z5 25分 |
出典:What’s on Zwift「The Gorby」(Zwift公式のワークアウトデータを収録したデータベース)
公式の説明文を読むと、このワークアウトの性格がはっきりします。The Gorbyには「The Quitter(脱落者)」という別名がついています。
This is a tough workout that you may be unable to finish.
(完走できないかもしれない、厳しいワークアウトです)riding to failure pays in both mental and physical gains
Zwift公式のワークアウト説明文より(出典:What’s on Zwift「The Gorby」)
(限界まで漕ぐことは、精神面でも肉体面でも報われる)
Zwift自身が「完走できない前提」でこのワークアウトを設計しています。名前からしてそうです。だから完走できなくても、落ち込む必要はまったくありません。
ゴルビーが見つからないときは
「探しても出てこない」という声を聞きます。削除されたわけではなく、置き場所が変わりました。
| 以前 | Less than 60 minutes to burn |
| 現在 | 60-90 minutes to burn |

2023年10月のZwift 1.49で、ワークアウトライブラリが新しいコレクションへ再編成されました。そのとき所属カテゴリが移動しています。VO2 Maxのカテゴリにも出てこないという報告がありますが、「すべて」から探せば見つかります。
→ 55% FTP(回復)で5分。
これを5セット繰り返す。
ウォームアップとクールダウンを
各10分、合計70分のワークアウト。
心拍が下がりきらないまま
次のインターバルが始まる地獄。

FTP200Wなら220W、
250Wなら275Wです。
この強度を5分キープします。3セット目あたりからが地獄の始まりです。
なぜゴルビー20回に挑んだのか
FTP 215Wで停滞が続いていました。ゾーン3やSST中心のトレーニングをしていたのですが、数字がまったく動かない。「もっと上の強度の刺激が必要では?」という仮説のもと、VO2max領域(110% FTP)を繰り返し追い込むゴルビーに目をつけました。
目標は「週2回ペースで20回完遂」。記録はZwiftのアクティビティデータをすべて残して、心拍・完走の有無を記録し続けました。
20回の記録:心拍推移と完走データ
1〜10回目:ほぼ完走できない時期
1〜6回目は全滅でした。4セット目で脚が終わり、ほぼ毎回DNF。「これ、絶対に無理なワークアウトでは?」と本気で思いました。
7回目で初めて完走。1回目と7回目を比べると、240W前後でのパワー分布が明らかに増え、同じ強度でも心拍が落ち着いてきたことがわかりました。


| 回数 | #1 | #2 | #3 | #4 | #5 | #6 | #7 | #8 | #9 | #10 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 最大心拍 | 159 | 162 | 171 | 164 | 168 | 162 | 165 | 162 | 163 | 162 |
| 平均心拍 | 135 | 134 | 147 | 134 | 139 | 137 | 138 | 130 | 129 | 134 |
| 完走 | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | ❌ | ✅ | ✅ | ✅ | ❌ |
11〜20回目:少しずつ耐えられるように
11回目以降も「楽になった」感覚は薄い。それでも4セット目で「もう少し粘れるかも」という感覚が生まれてきました。この10回での完走率は50%。心拍の平均トレンドは緩やかに下がっており、同じ負荷に対して体が適応しはじめているのがデータに出ています。
| 回数 | #11 | #12 | #13 | #14 | #15 | #16 | #17 | #18 | #19 | #20 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 最大心拍 | 161 | 159 | 162 | 158 | 153 | 156 | 151 | 156 | 155 | 161 |
| 平均心拍 | 135 | 137 | 136 | 132 | 131 | 129 | 127 | 133 | 129 | 132 |
| 完走 | ✅ | ✅ | ❌ | ✅ | ❌ | ❌ | ✅ | ❌ | ✅ | ❌ |

パワー分布の変化(1回目 vs 19回目)


結果:FTP215W → 232W(+17W)
20回のゴルビーを終えてランプテストを実施した結果、FTPは215W → 232W へ17W向上しました。

数字以外に感じた変化
- 他のワークアウトやレースが「少し楽」に感じるようになった
- 「5分なら頑張れる」という自信が定着した
- 240W近辺への心理的な壁がなくなった
- ZwiftのレースやWOの完走率が上がった
- Zwiftフォロワーさんの応援が増えた(副産物)
完走できなくてもいい——「やったか、やらなかったか」
これはわたしの精神論ではありません。前述のとおり、Zwift公式がこのワークアウトを「完走できないかもしれない」「限界まで漕ぐことは精神面でも肉体面でも報われる」と説明し、「The Quitter(脱落者)」という別名まで与えています(出典:What’s on Zwift「The Gorby」)。完走できないことは、このワークアウトでは想定内です。
わたしも最初はできませんでした。1〜6回目は全滅。4セット目で脚が終わって、毎回DNFです。「これ、絶対に無理なワークアウトでは?」と本気で思っていました。
初めて完走できたのは7回目。それでもその後また落として、20回のうち完走できたのは8回だけです。12回は失敗しました。
それでもFTPは215Wから232Wへ上がっています。
できた・できないではありません。やったか、やらなかったかです。
DNFになっても、4セット目まで踏んだ事実は消えません。体はその負荷を受け取っています。完走した日と、4セット目で落ちた日の差は、自分で思っているほど大きくない。20回分のデータがそれを示しています。平均心拍は後半にかけて下がり続けました。完走できなかった回も含めて、体は適応していたということです。
この20回で得たものは、FTPの数字だけではありませんでした。
抗がん剤治療で右足が思うように動かない中、左足+アルファでこのパワーを維持できているのは、このゴルビーやChasing Tourで鍛えたおかげだと思っています。
完走できないときに見直すこと
ゴルビーのインターバル強度はFTP連動です。FTPが実力より高く設定されていると、1〜2セットで潰れて練習になりません。まずは正確なFTP測定(ランプテストなど)をしてから取り組みましょう。
最初の5回と、最後の5回を並べてみてほしい
もしこれから始めるなら、わたしと同じように20回やって、記録を取ってみてください。そして最初の5回と最後の5回を並べてみてほしいです。
わたしの場合はこうなりました。まったく同じワークアウトです。
| 最初の5回 (#1〜#5) | 最後の5回 (#16〜#20) | 差 | |
|---|---|---|---|
| 平均心拍 | 137.8 | 130.0 | −7.8 |
| 最大心拍 | 164.8 | 155.8 | −9.0 |
| 完走 | 0回 | 2回 | +2 |
同じ強度を踏んでいるのに、最大心拍が9bpm下がりました。平均も7.8bpm低い。心臓が以前ほど慌てなくなった、ということです。
数字より先に、感覚のほうが変わります。高強度への抵抗感が減って、粘り強くなります。1本目に入る前の「うわ、来るぞ」という気持ちが薄れて、4セット目で「もう少しいけるかも」と思えるようになる。最初の5回と最後の5回では、同じワークアウトとは思えないはずです。
ゴルビーを続けるための3つのコツ
ゴルビーの次のステップ:Chasing Tour参戦へ
じつは20回で終わりにしたわけではありません。そのあとも6回ほど続けて、合計26回。やめたのではなく、Chasing Tourが始まったので中断した、というのが正確なところです。
2023年のゴルビー20回チャレンジでFTPを232Wへ引き上げた翌年、挑戦したのはZwiftのステージレース「Chasing Tour 2024」です。プロのグランツールと同じ日程で1年間・全92戦を走り切り、5度の優勝を経験しました。1年かけて積み上げた高強度耐性が、そのままステージレースの武器になりました。
まとめ:ゴルビー20回でFTPは動く。ただし覚悟が必要
地獄の20回で、停滞FTPが17W動いた
- FTPは215W → 232W(+17W)向上した
- 完走できたのは20回中8回。それでもFTPは動いた
- 平均心拍が後半に低下 = 体が適応した証拠
- 週2回・正確なFTP設定・換気の3つが成功の鍵
- 翌年のChasing Tour参戦で高強度耐性が武器になった
「何をしてもFTPが動かない」という停滞期には、SST・閾値走よりも上の強度、つまりVO2max領域への刺激が有効です。20回のデータがそれを示しています。
