ロングライドやZwiftの最中、お尻の痛みに耐えられずペダルを止めてしまった経験はありませんか? 「このサドルが合わないんだ」「もっと柔らかい高級サドルなら…」と考え、ネットで検索しては新しいサドルをポチる。
わかります、その気持ち。私たち50代にとって、時間は何よりも貴重です。せっかくの自分の時間を、痛みなんかで台無しにしたくありませんよね。
でも、ちょっと待ってください。 その痛み、サドルを買い替えても治らない可能性が高いです。
私は自転車歴7年。これまでに20個以上のサドルを試してきました。 Amazon、フリマ、海外通販…あらゆるサドルを買っては売りを繰り返し、ようやく一つの結論に辿り着きました。
それは、「魔法のサドル」なんてどこにもない、ということです。 今回は、数多の失敗と出費を重ねて得た「痛みをなくし、長く走り続けるための知恵」を包み隠さずお伝えします。
2万円のサドルを買う前に、まずはこの記事の「数百円〜0円」でできる対策を試してください。 それは、これからの人生を自転車と健やかに過ごすための、一番安上がりで確実な投資になるはずです。
【結論】痛みの原因は「モノ」ではなく「セッティング」
まず、私の恥ずかしい「サドル沼」の歴史をご覧ください。

- Amazonで7個
- メルカリ等のフリマで9個
- Wiggle(海外通販)で3個
- サイクルベースあさひで1個
合計20個。 これだけ試して分かった真実。それは、 「セッティングが間違っていれば、どんな高級サドルを使っても痛くなる」 ということです。
実際、現在私が愛用している「痛くないサドル」であっても、セッティングを数ミリ変えれば激痛や痺れが発生します。 つまり、新しい機材にお金を払う前にやるべきなのは、自分の身体と向き合う「ポジションの見直し」なのです。
なぜセッティングが合わないのか?「自分の身体」を受容する
セッティングの話に入る前に、一つだけお伝えしたい重要なことがあります。 それは、私たち大人は「自分の身体のクセ(歪み)」を認めなければならないということです。
若い頃とは違い、長年の生活習慣で体には必ず歪みが生じています。
私は「脊柱側弯症」です
私の場合、いくら調整しても右足に痺れが出たり、痛みが出たりしていました。 原因を探ると、私は「脊柱側弯症」(背骨が曲がっている)であり、「骨盤が左下がり」になっていることが分かりました。

サドルに座っても左腰が下がり、上半身が左に寄ってしまいます。結果、ハンドルを持つ左手に荷重がかかり痛みが出たり、左右のペダリングバランスが崩れたりしていました。
もし、あなたが何をしても片側だけ痛みが消えない場合、それはサドルのせいではありません。 一度、整体やフィッティングで「今の自分の体」を客観的に見てもらうことをお勧めします。
私は「左腰を上げる」ように意識して座りつつ、物理的な左右差を埋めるために「クリートスペーサー」で調整しています。衰えや歪みは恥ずかしいことではありません。それを受け入れ、道具で補うことこそが、大人の賢い遊び方です。
50代がやるべき「お尻が痛くならない」4つの調整ポイント
身体の歪みを考慮した上で、具体的にどこをどう調整すれば良いのか。 20個のサドルを無駄にして導き出した、調整の正解は以下の4点です。
- サドルの高さ(見栄を捨てる)
- サドルの角度(逃げ場を作る)
- サドルの前後位置(重心の最適化)
- 骨盤の角度(体幹で乗る)
1. サドルの高さ:大人は「低め」が正解
「ロードバイクはサドルが高い方がかっこいい」 そんな若い頃の価値観は、今すぐ捨てましょう。高すぎるサドルは、ペダリングのたびに骨盤を無理に揺らすことになり、股擦れや痛みの最大の原因になります。
【私の推奨セッティング】
- 裸足でサドルにまたがる。
- ペダルを一番下(6時)の位置にする。
- その状態で「かかと」がペダルに付き、膝が少し曲がるくらいに合わせる。
これは一般論より「低め」の設定です。 しかし、これで良いのです。サドルを適正まで下げることは、敗北ではありません。「無理なく長く走り続ける」という意思表示です。 街中で見るかぎり、80%以上の方はサドルが高すぎると感じます。まずは下げて、楽になりましょう。
2. サドルの角度:前下がりで「逃げ場」を作る
「サドルは水平であるべき」という固定観念も捨ててください。 特に腰痛持ちの方や、尿道の圧迫感が強い方は、サドルの鼻先(先端)を少し下げる「前下がり」の設定をお勧めします。
ほんの数度下げるだけで、圧迫が抜け、骨盤が自然に前傾しやすくなります。 この「微妙な角度調整」をするには、無段階で角度を変えられるシートポスト(日東S92など)があると非常にスムーズです。新しいサドルを買うより、この一本に投資する方が、将来の快適性はずっと高まります。
3. サドルの前後位置:重心の分散
前後位置は、体重をお尻一点に集中させないために重要です。 ハンドルとの距離が適切でないと、腕やお尻に極端な荷重がかかります。「サドルの真ん中に座った時、ペダル軸と膝の位置関係が適正か」を確認してください。
自己流で迷走するよりも、一度基本に立ち返ることも大切です。「自転車の教科書」などの良書は、迷える私たちの道標になってくれます。
4. 骨盤の角度:「点」ではなく「面」で座る


「坐骨が痛い」という方は、骨盤が後傾し(後ろに倒れ)、坐骨の尖った部分(坐骨結節)がサドルに突き刺さっている状態です。
- 悪い例: 背中を丸めて猫背になる(腰への負担大)
- 良い例: おヘソを前に出すイメージで、股関節から骨盤を前に倒す
こうすることで、坐骨の「点」ではなく、「太ももの付け根〜お尻の筋肉全体」という「面」で体重を支えられるようになり、痛みが劇的に分散されます。
Zwift民必見!痛みの正体「股ずれ」を防ぐ皮膚ケア
セッティングが完璧でも痛くなることがあります。 特に私たち中高年の肌は、悲しいかな、水分量や弾力が低下しています。 インドア(Zwift)で顕著なのが、「大量の汗による皮膚のふやけ・摩擦(股ずれ)」です。
皮膚がふやけると強度が下がり、少しの摩擦で火傷のような痛みを発症します。 これを防ぐには、以下の2つのアプローチで「肌を守る」しかありません。
① 「タオル4枚使い」でパッドを濡らさない
長時間Zwiftを行うイギリス人ライダーから教わった、泥臭いですが最強の秘策です。
- お腹周り(脇腹も)に1枚
- 背中(腰)に1枚
- お尻の割れ目の上に小さなハンカチを1枚
- 首に1枚巻く
合計4枚のタオルをウェアに挟み込み、汗がレーサーパンツのパッドへ流れ落ちるのを物理的にブロックします。 そして、これを1時間ごとに全交換します。 洗濯物は増えますが、パッドをドライな状態に維持できるため、痛みは嘘のように減ります。家族には呆れられるかもしれませんが、自分の快適さには代えられません。
② 最強の保護クリーム「Protect J1」を塗る
ワセリンや様々なシャモアクリームを試しましたが、私のファイナルアンサーは「Protect J1」一択です。
- 使い方: 股間、坐骨周りなど、サドルと触れる皮膚に直接塗る。
- 効果: 5分ほどで皮膚に強力な保護膜(バリア)を作り、ふやけと摩擦を鉄壁ガードする。
Zwiftをやる前、パワーメーターの校正は忘れても「Protect J1」だけは絶対に忘れません。それくらい効果絶大です。 サドルを買い換える費用の10分の1以下で済みます。 これは単なるクリームではありません。「あの頃の肌の強さ」を一時的に取り戻すためのアイテムです。騙されたと思って一度試してください。世界が変わります。
まとめ:サドルを買うのは「調整」と「ケア」をしてから
お尻の痛みは、自転車を辞めたくなるほど辛い悩みです。 しかし、その原因の多くは機材(サドル)そのものではありません。
- 見栄を張らず、サドルを低く・前下がりに調整する
- 骨盤を倒し、体全体で乗るフォームを意識する
- Protect J1とタオルで、デリケートな大人の肌を守る
まずはこの3つを徹底してみてください。 それでもダメだった時に初めて、新しいサドルを検討しても遅くはありません。
痛みがなくなれば、景色を楽しむ余裕が生まれます。 明日も、10年後も、笑顔でペダルを回し続けるために。今ここでの「調整」という投資を、ぜひ実践してみてください。
