Zwiftの長期間にわたるステージレース、「Chasing Tour 2024(カテゴリD)」への参戦が終わりました。
結論から言います。ボロボロにやられました。
優勝できたのは数回だけ。あとは若者や世界の豪脚たちに置いていかれる日々。 それでも、全92レースを振り返った今、私の心にあるのは「悔しさ」よりも「清々しさ」です。
この記事では、体力の衰えや腰痛と付き合いながら完走した記録と、「勝てないのになぜ楽しいのか?」という、50代からのZwiftの向き合い方についてお話しします。
第1クール:自分の「老い」と「武器」を知る
最初のシリーズは、ワンデーレース10回とステージレース2つの構成。 ここで私は、自分の立ち位置を痛感させられました。
カテゴリD(Zwift内では初心者クラス)とはいえ、優勝ラインはパワーウエイトレシオ3.2w/kgあたり。300w近いパワーで踏み続ける猛者もいます。 対して私は頑張っても平均210w程度。
正直、まともにぶつかっては勝ち目がありません。
50代の武器は「体力」ではなく「賢さ」
そこで私がとった作戦は、「コバンザメ走法」です。
速い人の後ろに隠れて風をよけ(ドラフティング)、体力を温存し、ゴール前の一瞬だけ死力を尽くす。 「セコい」と言われるかもしれませんが、これも立派な戦術。体力が落ちた分、経験と頭脳で補う。これが大人の遊び方です。
▼第1クールの結果(優勝1回)
| レース名と結果 | 距離 / 標高 | パワー/ 心拍 |
|---|---|---|
| Bianche | 64.8 / 620 | 180 / 137 |
| dAzur #1 個人TT | 24.6 / 196 | 203 / 138 |
| dAzur #2 | 32.4 / 284 | 195 / 140 |
| dAzur #3 | 42 / 756 | 191 / 138 |
| dAzur #4 優勝/6人 | 40.1 / 307 | 206 / 143 |
| dAzur #5 3位/9人 | 43 / 1106 | 188 / 139 |
| dAzur #6 | 41.4 / 732 | 192 / 142 |
| Sanremo 3位/3人 | 69.9 / 698 | 163 / 139 |
| Saxo | 38 / 389 | 207 / 142 |
| Wevelgem | 54.6 / 386 | 199 / 147 |
| Dwars | 27.7 / 214 | 201 / 142 |
| Vlaanderen | 47.5 / 675 | 184 / 149 |
| Roubaix | 56.4 / 671 | 186 / 147 |
| Amstel | 59.5 / 502 | 190 / 144 |
| Wallonne | 36.2 / 396 | 210 / 150 |
| Leige | 57.9 / 932 | 200 / 149 |
| Romandie #1 | 36.6 / 298 | 197 / 149 |
| Romandie #2 | 36 / 529 | 163 / 127 |
| Romandie #3 個人TT | 15.5 / 105 | 200 / 141 |
| Romandie #4 | 34.5 / 920 | 199 / 142 |
| Romandie #5 | 39.1 / 670 | 212 / 140 |
| TOTAL | 897.7km 11,386m | 193w 142bpm 1.35w/bpm |
「遅い区間」こそ頑張る。大人のペース配分
レースを通じて、一つ大きな発見がありました。 Zwift攻略サイトで見かけた「速度が遅い(登り)区間こそパワーを出す」という走り方です。
平坦や下りは足を休め、きつい登りだけ頑張る。 これを実践したところ、個人TT(タイムトライアル)で3位、さらには優勝まで手が届きました。
▼メリハリ走法でのTT結果


若い頃のように「最初から最後まで全力」はもう無理です。
「抜くところは抜き、ここぞという時だけ力を込める」。 これはZwiftに限らず、50代の人生訓そのものかもしれませんね。
身体の悲鳴と、それを支える「知識」への投資
もちろん、精神論だけではどうにもならないこともあります。
月間2,000kmという目標を掲げて走っていましたが、身体は正直です。 第2クール、第3クールでは、「ぎっくり腰」と「熱中症」に見舞われました。
▼第2クールの結果(優勝なし・DNSあり)
| レース名と結果 | 距離 / 標高 | パワー/心拍 |
|---|---|---|
| Pink #1 | 37 / 362 | 181 / 141 |
| Pink #2 | 40 / 529 | 190 / 134 |
| Pink #3 | 38.5 / 202 | 190 / 130 |
| Pink #4 個人TT 3位/15人 | 36 / 338 | 210 / 138 |
| Pink #5 | 32 / 831 | 194 / 135 |
| Pink #6 | 34.7 / 88 | 194 / 141 |
| Pink #7 | DNS | ー / ー |
| Pink #8 | DNS | ー / ー |
| Pink #9 | DNS | ー / ー |
| Pink #10 | 42.4 / 310 | 173 / 129 |
| Pink #11 個人TT | 31 / 180 | 179 / 129 |
| Pink #12 | 35.6 / 412 | 165 / 127 |
| Pink #13 | 46 / 447 | 176 / 134 |
| Pink #14 3位/5人 | 41 / 781 | 195 / 143 |
| Pink #15 | 33.9 / 78 | 159 / 120 |
| Pink #16 | 37 / 476 | 171 / 124 |
| Pink #17 3位/4人 | 43 / 1106 | 185 / 138 |
| Pink #18 | 40.7 / 201 | 173 / 128 |
| Suisse #1 | DNF | ー / ー |
| Suisse #2 | 36.7 / 407 | 151 / 116 |
| Suisse #3 3位/6人 | 35.2 / 455 | 203 / 140 |
| Suisse #4 | 50 / 750 | 170 / 123 |
| Suisse #5 3位/6人 | 43.8 / 1117 | 185 / 134 |
| Suisse #6 個人TT 2位/5人 | 12.9 / 480 | 209 / 140 |
| TOTAL | 747.4km 9,550m | 182w 132bpm 1.37w/bpm |
▼第3クールの結果(優勝なし・DNFあり)
| レース名と結果 | 距離 / 標高 | パワー/ 心拍 |
|---|---|---|
| Yellow #1 | 45.7 / 506 | 192 / 141 |
| Yellow #2 | 37.0 / 372 | 169 / 124 |
| Yellow #3 | 42.0 / 250 | 195 / 139 |
| Yellow #4 | 38.0 / 755 | 188 / 139 |
| Yellow #5 | 40.0 / 345 | 202 / 143 |
| Yellow #6 2位/10人 | 42.0 / 129 | 202 / 140 |
| Yellow #7 個人TT | 25.0 / 134 | 206 / 138 |
| Yellow #8 | 41.1 / 308 | 186 / 132 |
| Yellow #9 | 45.7 / 398 | 197 / 134 |
| Yellow #10 | 46.9 / 290 | 190 / 132 |
| Yellow #11 | 44.0 / 578 | 175 / 126 |
| Yellow #12 | 38.0 / 334 | 203 / 135 |
| Yellow #13 | 39.4 / 504 | 199 / 129 |
| Yellow #14 | 56.0 / 1348 | 183 / 131 |
| Yellow #15 | 41.0 / 725 | 169 / 119 |
| Yellow #16 | 36.5 / 460 | 145 / 114 |
| Yellow #17 | 35.6 / 372 | 161 / 125 |
| Yellow #18 | 42.8 / 292 | 178 / 124 |
| Yellow #19 2位 / 4人 | 46.2 / 1683 | 179 / 129 |
| Yellow #20 | 44.1 / 1029 | 177 / 127 |
| Yellow #21 個人TT | 33.4 / 537 | 209 / 140 |
| オリンピック 個人TT | 32.4 / 130 | 211 / 139 |
| オリンピック ロード 2位 / 2人 | 273.0 / 3105 | 96 / 107 |
| eスポーツ選手権 | 64.0 / 1022 | 164 / 129 |
| TOTAL | 1229.8 km 15,301 m | 182 w 130 bpm 1.40w/bpm |
心拍数は平均130bpm前後。これ以上上げると身体が危険信号を出します。 「気合い」で走る年齢は終わりました。これからは「ロジック」で走る時代です。
私が参考にしているのは、トレーニングの専門書です。 闇雲にペダルを回すのではなく、「どうすれば怪我なく効率的に強くなれるか」を学ぶ。 数千円の書籍代は、怪我で通院する治療費や時間を考えれば、最も安い保険と言えるでしょう。
「孤独」ではない。世界の同世代と走る夜
第4クール、第5クールと進むにつれ、面白い現象が起きました。 毎回同じようなメンバーが参加しているため、顔見知りが増えてくるのです。
スタート前には「Merci!」「Vamos!」「Pura vida!」と多言語が飛び交います。 そこには、国境も年齢も関係ありません。
「あいつ、今日も逃げようとしてるな」 「こいつはスプリント狙いだな」
画面越しに、互いの性格や脚質まで分かってくる。 コスタリカのチームが連携して仕掛けてきた時など、「そう来るか!」とニヤリとしてしまいます。
▼第4クールの結果(優勝1回・コスタリカ勢との激闘)
| レース名と結果 | 距離 / 標高 | パワー/心拍 |
|---|---|---|
| Red #1 3位 / 3人 | 37.7 / 401 | 179 / 135 |
| Red #2 | 42.8 / 140 | 198 / 145 |
| Red #3 3位 / 5人 | 38.0 / 330 | 199 / 139 |
| Red #4 2位 / 6人 | 35.0 / 118 | 194 / 141 |
| Red #5 | 52.5 / 400 | 168 / 136 |
| Red #6 2位 / 4人 | 34.6 / 755 | 189 / 137 |
| Red #7 | 36.9 / 400 | 192 / 143 |
| Red #8 | 38.0 / 394 | 195 / 143 |
| Red #9 2位 / 5人 | 37.4 / 440 | 193 / 141 |
| Red #10 | 27.9 / 670 | 191 / 138 |
| Red #11 2位 / 5人 | 44.6 / 680 | 189 / 140 |
| Red #12 2位 / 2人 | 47.0 / 747 | 182 / 135 |
| Red #13 | DNS | ー / ー |
| Red #14 3位 / 5人 | 40.0 / 370 | 190 / 143 |
| Red #15 優勝 / 4人 | 42.2 / 303 | 193 / 141 |
| Red #16 | 37.4 / 640 | 191 / 138 |
| Red #17 3位 / 4人 | 55.3 / 960 | 195 / 134 |
| Red #18 個人TT 2位 / 3人 | 24.6 / 90 | 212 / 141 |
| TOTAL | 709.6km 8,559m | 191w 139bpm 1.37w/bpm |
▼第5クールの結果(優勝3回・有終の美)
| レース名と結果 | 距離 / 標高 | パワー/心拍 |
|---|---|---|
| Quebec 優勝 / 5人 | 40.4 / 620 | 205 / 142 |
| Montreal 優勝 / 5人 | 49.1 / 390 | 200 / 145 |
| 世界選手権 個人TT2位/3人 | 46.1 / 380 | 183 / 136 |
| 世界選手権 ロード | 76.3 / 1421 | 165 / 134 |
| Lombaridia 優勝 / 4人 | 81.6 / 878 | 182 / 143 |
| TOTAL | 293.5km 3,689m | 187w / 140bpm 1.33w/bpm |
私たちの「サードプレイス」
50代になると、職場と家庭以外のコミュニティが減っていきます。 しかし、Zwiftのレース会場は、まさに「大人の社交場」でした。
上位カテゴリのライダーが励ましてくれたり、時には引いてくれたり。 一人で部屋で漕いでいるはずなのに、決して一人じゃない。 この「緩やかな繋がり」こそが、私が92戦も続けられた最大の理由です。
まとめ:92戦して見えた「5勝」の価値

- 全92戦
- 優勝:5回
- 勝率:約5%
数字だけ見れば「惨敗」かもしれません。 しかし、この5勝の裏には、怪我を乗り越え、戦略を練り、世界の仲間と切磋琢磨した92回分のドラマがあります。
「もう歳だから」とソファで寝転がるのも人生。 「まだやれる」とペダルを回し、大量の汗をかくのも人生。
もしあなたが、体力作りや新しい趣味を模索しているなら、私は自信を持ってZwiftをおすすめします。 高価なロードバイクを買って外に出る必要はありません。今あるクロスバイクに、スマートトレーナーを繋ぐだけです。
それは単なるゲームへの課金ではなく、「10年後も自分の足で歩き、楽しむための未来への投資」です。
2025年は「ECRO(E-Cycling Race Organization)」として開催される予定です。 画面の向こうで、あなたと一緒に走れる日を楽しみにしています。 私を見かけたら、ぜひ前について風よけになってください(笑)。
これからZwiftを始める方へ
私が使っているトレーナーや機材については、以下の記事で詳しく紹介しています。 まずは「レンタル」感覚で、安いモデルから試してみるのも賢い選択ですよ。
▼ 私が使っている機材はこちら

