「足柄峠って、クロスバイクでも登れるのかな?」
「どれくらいキツイんだろう…今の体力で大丈夫だろうか」
もしあなたが今、画面の前でそんなふうに不安を感じているなら、私たち同世代(アラフィフ)としての結論を先にお伝えします。
足柄峠は、想像を絶する「壁」でした。
最大勾配14%という激坂は、私たちおじさんの脚を容赦なく削り取っていきます。正直、登っている最中は「なんでこんな休日に苦行を…」と後悔しかけました。
しかし、その苦しみの先で待っていたのは、車で行くのとはわけが違う、息をのむような絶景の富士山でした。
今回は、汗と涙、そしてプライドもズタズタにされた足柄峠チャレンジを包み隠さずレポートします。「速く走る」ことより「長く走り続ける」ことを選び始めたあなたへの、ささやかな道しるべになれば幸いです。
激坂対策:それは「逃げ」ではなく、大人の「機材投資」
「足柄峠=激坂」という事前情報をキャッチしていた私は、出発前に愛車(クロスバイク)にあるカスタムを施しました。
「少しでもギアを軽くしたい…!」
その一心で、スプロケット(後ろのギア)を標準的なものから「11-34T(8s)」に交換しました。これまでのギアに比べて約5%軽くなる計算です。

若い頃なら「たった5%の差なんて、気合でカバーしろ」と笑っていたかもしれません。しかし、私たち50代にとってのこの5%は、「翌日に響かせないための保険」であり、「膝という消耗品を守るための医療費」でもあります。もう医療費控除の対象にして、50代以降は非課税にしてほしいくらいです。
筆者の機材スペック
- 車種: クロスバイク(フロントシングル仕様)
- フロントギア: 38T(ナローワイド)
- リアギア: 11-34T(今回導入!)
- 最も軽いギア比: 1.12(38÷34)
計算上は、ロードバイクのインナーロー(一番軽いギア)とほぼ同等。「これならなんとかなるだろう」と高を括っていましたが、この考えが甘かったことを後で思い知らされます。
もしあなたが標準的なクロスバイクのギア(11-32Tなど)のままで行こうとしているなら、悪いことは言いません。迷わず34Tへの交換をおすすめします。数千円の投資で、地獄の苦しみから少しだけ救われます。それは、自分への優しさです。
足柄峠ヒルクライム本番:ロード乗りの「激坂」を翻訳する
横浜の自宅を朝6時半に出発し、約40km地点の松田駅には9時に到着。

ここまでは平坦基調で、巡航速度20~25km/hの快適なサイクリングでした。
松田駅前でGarminウォッチ(Vivoactive3)を充電しつつ、30分ほど休憩していざ峠へ。この時はまだ、自分の脚を信じていました。
序盤はルンルン、途中から絶望
峠へのアプローチ序盤は、自然豊かで空気も美味しく、「来てよかった~!これぞ大人の休日」と鼻歌まじり。

しかし、トンネルを抜けた少し先から、世界が一変します。
目の前の路面が、グイッと空を向いているのです。
ハイキング気分だったのに、急に「鎖場」が現れたような感覚。ここで私は、自転車界の重要な真理を思い出しました。
ロードバイク乗りの言葉の翻訳ガイド
- 「激坂」→ クロスバイクにとっては「絶壁」です。
- 「アップダウンがある」→ それ「激坂」です。
ずっと続く10~14%の勾配
そこからは、自分との対話(という名の悶絶)でした。サイコンの表示はずっと10%~14%を行ったり来たり。

顔がステム(ハンドルの中央)にくっつくような前傾姿勢で、必死にペダルを回します。

自分、なんで週末にこんな辛い思いをしてるんだ?
「持久系スポーツあるある」のそんな問いが頭の中を占領し始めます。答えはシンプルです。



登りたかったから!
それ以上でもそれ以下でもありません。
屈辱の受容:ランナーに抜かれる
右カーブで14%ということは、内側の左カーブはさらにキツイはず…。
息も絶え絶えで登っていると、ずいぶん手前で追い抜いたはずのランナーの足音が近づいてきました。
そして、結構な速度差であっさりと抜き返されました。
「登りでランナーに抜かれる」なんて、Zwift(バーチャルサイクリング)の中だけと思っていましたが、リアルでも体験してしまいました。アラフィフのプライドはズタズタですが、もう対抗する脚は残っていません。
「もう無理しなくていい」
誰かと競う必要なんてない。何度も足を着き、呼吸を整え、自分のペースで登ればいい。そう開き直れた瞬間、少しだけ景色を見る余裕が生まれました。
ご褒美タイム:自分の足で稼いだ絶景
急に道端に観光客が増えたと思ったら、そこが足柄峠でした。


到着して気づきましたが、ここはサイクリストの聖地「ヤビツ峠(761m)」とほぼ同じ高さ。どうりでキツイわけです。
しかし、峠を越えた先のポイントで待っていたのは、疲れが一瞬で吹き飛ぶような、圧倒的な富士山でした。


車やバイクで来れば、汗もかかずに見られる景色かもしれません。でも、自分の心臓をバクバクさせ、弱った足腰をフル動員して辿り着いたこの景色は、「まだ自分はこれだけやれるんだ」という自己肯定感とセットになっています。
これこそが、私たちが自転車に乗る理由なのかもしれません。
下りと帰り道のトラブル:大人のリスク管理
下りは「握力」との戦い
登りで脚を使い果たしましたが、下りも楽ではありません。
私のクロスバイクはVブレーキですが、体重+車重が14%の坂を落ちていくエネルギーを止めるには、かなりの握力が必要です。



ディスクブレーキだったらもっと楽なんだろうな…
下りながら、次の機材投資への言い訳を考えていました。安全をお金で買うのも、大人の賢明な判断です。
家まであと10kmで悲劇が
体力を使い果たし、ヘロヘロになって帰宅している途中、違和感を感じました。



やけにペダルが重い…
恐る恐るリアタイヤを見ると、ペチャンコに潰れています。
携帯ポンプで空気を入れて再スタートしましたが、すぐにまたペチャンコに。完全にパンクです。
この時、正直に言えば「絶望」しました。もう修理する気力も体力も残っていません。結局、近くの自転車ショップまでトボトボと手押しで歩きました。
この経験から強く学んだことがあります。
「楽をする」ためではなく「無事に家に帰る」ために、電動ポンプを持っていくこと。
激坂チャレンジの際は、疲労で指先も動かなくなります。そんな時に、手動で数百回ポンピングするのは不可能です。
アラフィフにとっては、家族に心配をかけないためのマナーといえます。
まとめ:足柄峠はキツイ!でも、人生のスパイスになる
足柄峠へのクロスバイク挑戦、いかがでしたでしょうか。
- 平坦路: 快適な大人の休日。
- 足柄峠: クロスバイクには「壁」。自分の弱さを知る場所。
- 結論: たぶん、もう二度と行きません!(キツすぎるから…笑)
でも、あの富士山の絶景と「登り切った」という事実は、私の人生の大切な財産になりました。
もしこれから挑戦される同世代の方は、「恥ずかしがらずに軽いギア」と「万全のパンク対策(電動ポンプ)」、そして「誰かに抜かれても気にしない心」を持って挑んでください。
その先には、きっと素晴らしい「自己肯定感というご褒美」が待っています。
本日の走行データ(Garmin Vivoactive3計測)
| 項目 | 記録 |
| 走行距離 | 114km |
| 走行時間 | 6時間42分 |
| 平均速度 | 17.0km/h |
| 消費カロリー | 2491kcal |
| 平均心拍 | 122bpm |
※この消費カロリー分、今夜のビールが美味しいことは間違いありません。

