「こんなにキツイとは思わなかった・・・」
これが、人生の折り返し地点を過ぎてヤビツ峠に挑んだ私の、偽らざる感想です。
横浜の自宅から約29km。スタート地点に立つだけでも一仕事ですが、本当の勝負はそこから。
ヤビツ峠といえば、最新のロードバイクに身を包んだベテランや、鍛え抜いた学生たちがタイムを競う場所というイメージですが、私はあえて「クロスバイク+スニーカー」という、いつものスタイルで挑んでます。
シンプルにロードバイク(高級バイク)とか持ってないですし・・・
ショップの練習会に参加するほどガチでないから気が引けるし、そもそも競技志向の性格でもない。
一人で自由気ままに走るのが好きなのです。
これは、自宅で好きな時間にトレーニングできるZwift(インドアサイクリング)という武器と、アラフィフに優しい機材を活用して、少しずつ自信(脚力)を取り戻していった記録です。
一人でも強くなる。Zwiftという「秘密兵器」
スタート地点の名古木(ながぬき)交差点。ここに至るまでのアプローチですでに脚には疲労が・・・。初めて挑んだ時は、善波のトンネル手前で心拍数が上がりきってしまい「もう引き返すべきかな」と本気で迷ったほどです。
善波の坂を避けるべく海岸線から北上するルートも試しましたが、結局は遠回りで余計に疲れた・・・。善波を超えていく正面突破が、なんだかんだ一番楽だとわかりました。
自宅での積み重ねが、坂道での「余裕」に変わる
名古木交差点のコンビニで十分に休憩してからスタート。その直後からギアはインナーローです。

もうギアないけど大丈夫か?
不安と戦いながらもなんとか漕ぎ続けて、最初の関門である蓑毛バス停手前の急勾配(13%)へ。

この辺りでいつもロードバイクに抜かれます。
遅いのは変わりませんが、回数を重ねるごとに確かな変化が起きました。
| 記録回 | タイム | 心境の変化 |
| 初挑戦 | 23分39秒 | 無理のしすぎ。心臓の音が耳元で鳴り響く。 |
| 2回目 | 24分43秒 | 迂回ルートで逆に消耗。 |
| 3回目 | 22分45秒 | 少しだけ呼吸のリズムが掴めてきた。 |
| 4回目 | 18分09秒 | Zwiftの効果を実感。景色を見る余裕が生まれる。 |
| 5回目 | 21分56秒 | タイムよりも、風を感じることを優先。 |
4回目での大幅なタイム短縮。これは決して「気合」でペダルを踏んだからではありません。Zwiftを1年間こぎ続けた結果です。
ジムに通うのは億劫だし、ムキムキマンと並んで練習するのはなんか嫌・・・。でも、自宅でトレーニングなら気兼ねなく汗だくになれますし、雨の日も風の日も、好きな音楽を聴きながらペダルを回し続けることが出来ました。
私のようなちょっと内向的なサイクリストにとって、この自宅という安心感こそがZwift最大のメリットかもしれません。
痛みは我慢しない。「楽をする」ための機材選び
蓑毛を過ぎ、菜の花台への道のりは、視界が開けたり閉じたりを繰り返す尾根道が続きます。ここで私を苦しめたのは、体力的な限界よりも「腰の痛み」でした。
蓑毛バス停までの頑張りの代償でしょうか・・・
若い頃なら根性で済ませられる痛みかもしれませんが、ギックリ腰経験者としては看過できません。これはサドルを変えることで解消できました。
菜の花台までの道のりで見つけた答え

| 記録回 | タイム | 身体の状態 |
| 初挑戦 | 23分09秒 | 腰が痛くてペダルを踏めない。 |
| 2回目 | 24分18秒 | PLUSHサドル導入。痛みが消えた。 |
| 3回目 | 23分02秒 | スニーカーの高校生に抜かされる。 |
| 4回目 | 20分28秒 | ここでもZwift効果を実感。 |
| 5回目 | 22分04秒 | 気温30度でもバテない粘り強さ。 |
注目していただきたいのは、タイムよりも「腰痛なし」という事実です。
「痛みが消えた」ということは、その分だけ景色を楽しむ余裕が生まれたということ。このサドルへの投資は、私にとってはもはや「医療費」のようなものです。
数グラムでも軽くするために硬いサドルを選ぶのは、コンマ1秒を削るレーサーの仕事です。私たちは「快適さ」を買って、翌日に疲れを残さないサドル選びをすべきと考えます。
抜かれることは、自分のペースを守れている証
菜の花台を過ぎると、眼下に美しい街並みが広がります。ここからはラストスパート。

後方から、「シャーッ」という音と共にロードバイクが私を追い抜いていきます。時には健脚なランナーにさえ抜かれます。
なんであんなに速いのか・・・毎回感心します。
まあスマホ片手に撮影ポイントを探しながら走る筆者とは、もう思想からして違いますね。ヒルクライムは自分のペースで登り、安全に自宅に帰ることを最優先します。
ヤビツ峠ゴールまでの記録
| 記録回 | タイム | 登頂の記録 |
| 初挑戦 | 20分32秒 | 苦しくてストレッチ休憩ばかり。 |
| 2回目 | 20分16秒 | 腰が痛まず、最後まで満喫できた。 |
| 3回目 | 19分39秒 | ついに20分切り。自分なりの達成感。 |
| 4回目 | 17分43秒 | Zwiftありがとう。 |
| 5回目 | 16分08秒 | 抜かされまくりだが、過去最高の自分。 |
5回目、私は数え切れないほどの人に抜かれましたが、過去最高の「16分08秒」で区間を走り抜けました。ガチでなくとも記録更新はうれしいです。
10年後の自分のために、今日ペダルを回す
私みたいな、自由気ままに走るだけのサイクリストでもヤビツ峠を登れるようになったのは、Zwiftで距離を積み重ねたおかげです。
Zwift(インドアサイクリング)は、単なるゲームではありません。
忙しい私たちが、誰の目も気にせず効率よく心肺機能を高め、「自分の足でどこまでも行ける自由」を確保するための、最もコストパフォーマンスの良い自己投資です。
もしあなたが、ヤビツ峠に挑戦していることを「もういい歳だから」「本格的な自転車じゃないから」と躊躇しているなら、ぜひ一歩踏み出してみてください。
ひと踏みひと踏みと頂上を目指す時間は、何物にも代えがたい充実感です。

