「完成車についていたから」「みんなが使っているから」
そんな理由で、なんとなく170mmのクランクを使い続けていませんか?
もしあなたが、ライドの後半で「膝に鈍い違和感」を覚えたり、下ハンドルを持った時に「お腹周りの詰まり」を感じて呼吸が浅くなったりしているなら、それは体力不足でも、練習不足でもないかもしれません。
単に「道具が、今のあなたの身体に合っていない」だけだとしたらどうでしょう。
私は数年前、慣れ親しんだ170mmから165mm(ショートクランク)へ交換しました。その後、Zwiftや実走を含めて5万km以上を走破して実感している結論をお伝えします。
「170mmに戻そうと考えたことは、一度もありません」
なぜなら、ショートクランクに変えたことで、私のサイクルライフから「我慢」や「痛み」といったノイズが消え、相対的に走る楽しさが増したからです。
この記事では、アラフィフ世代の私が感じた身体のリアルな変化と、なぜこの選択が「長く走り続けたい人」にとって最適解なのかお話ししたいと思います。
衝撃の事実:世界のトッププロは、身長に関係なく「短く」している
「背の高い欧米人は、長いクランクを豪快に回している」
そんなイメージを持っていませんか? かつての私は、「クランク長は身長の10分の1説」を有効性もよく分からすに信じ込んでいて「クランク長は170mmにすべし」といった信念(?)を持っていました。
しかし、最新データを調べてみたら・・・思っていたのと違う現実が見えてきました。
主要選手の身長とクランク長リスト
| 選手名 | 身長 (cm) | クランク長 (mm) |
| ヨナス・ビンゲゴー | 175 | 160 |
| タデイ・ポガチャル | 176 | 165 |
| レムコ・エヴェネプール | 171 | 165 |
| クリス・フルーム | 186 | 175 |
※近年のデータに基づく
ツール・ド・フランスを制するようなトップ選手たち、私よりも身長が高いにもかかわらず、165mmや160mmクランクを選んでいます。

彼らが求めているのは、絶対的なパワーではなく「エアロポジションでの呼吸のしやすさ」なのではないでしょうか?高速化している近年のロードレース、高速時の快適化、つまり空気抵抗対策が何よりも重視されそうです。
機材の進化に伴って市民レースも高速化していますから、プロ同様にショートクランクが人気なのでしょう。わたしは実は、別のところに理由があるのですが・・・その辺もアラフィフ事情も詳しくご紹介します。
170mm→165mmにして感じた「身体の痛み・変化」
理屈はさておき、実際に交換してどう変わったのか。
FC-RS200、FC-R7000の165mmクランクに交換して、5万km乗り込んで私の身体に起きた「正直な変化」をお伝えします。
1. 膝の「あの違和感」がスッと消えた
これが私にとって最大の恩恵でした。
50を超えてから実感していることなのですが、筋肉よりも先に関節に限界が来るのです。足が攣るよりも先に関節痛が来ます。関節可動域が徐々に狭くなる世代ですから、これは抗わずに受け入れないといけません。
曲げ伸ばし角度を狭めようと165mmに変えてから、さっそくZwiftに実走に使ってみました。
クランクがたった5mm短くなることでサドルも5mm上がり、上死点では相対的に10mmの余裕ができます。膝を深く曲げる必要がなくなり、関節への負担が減って確実に漕ぎやすくなりました。
2. 「お腹のつかえ」がなくなり、呼吸が楽に
ひざの痛みと同じくらい気になっていたのは、ペダリングの窮屈感です。深く前傾すると太ももがお腹に当たってしまいまい、ワット数関係なく息苦しいという悲しい現実・・・。心当たりはありませんか?
クランクを短くすると、ペダルが一番上に来た時(上死点)の足の位置が下がります。そしてサドルも上がることで、
- 股関節が深く曲がりすぎない
- 太ももとお腹の間に隙間ができる
のです。この隙間のおかげで、お腹が肺を圧迫しなくなって楽に呼吸ができます。長い登り坂で、以前よりも息が上がりにくくなったのは、決して心肺機能が向上したからではありません。自分に合った機材を使ったからです。
せっかくの休日をより充実したものにするために、準備すべき機材にはお金を使いましょう。私たちが一番欲しいのは、充実した休日なのですから。
3. ダンシング(立ち漕ぎ)のリズムが変わる
正直に言います。最初は違和感がありました。
階段の段差が変わったかのような感覚です。段差170mmの階段と165mmの階段の違い。もしくは停止しているエレベータを降りるときのような足の運びの違和感とでも言いましょうか。
しかし、慣れてくるとこれが武器になります。
小さな段差をトントンと登っていく感覚。リズムよく登りやすい(=体重を乗せやすい)ので無理やりペダルを押し込む感がないのです。
なぜ「5mm」でこれほど世界が変わるのか?
「たった5mmでしょ?」と思われるかもしれません。
しかし、ペダルは円運動です。直径にすれば10mmの変化。1分間に90回回せば、1時間で5400回。
5400回、毎回膝を深く曲げ伸ばしするか、余裕を持って回すか。
この積み重ねが、ライド後半の疲労感、ひいては数年後の関節の健康状態に大きな差を生むのです。
サドルを上げられる「副次的メリット」
クランクが5mm短くなると、足が一番下に来た時(下死点)の位置が5mm上がります。つまり、サドルを5mm上げることができます。
そして先ほども書きましたが、クランク上死点の位置は5mm下がるので、サドルとの距離は10mm広がるのです。これだけの違いが生まれれば、身体が硬くても、お腹周りが少し気になっていても、スムーズに足が回るのは当然です。ウエストマイナス何センチ分に相当するのかは分かりませんが、楽になります。
【導入の注意点】軽量化は期待しないでください
良いこと尽くしに聞こえるかもしれませんが、1点だけ、期待してはいけないことがあります。
それは「軽量化」です。
「短くなるんだから、軽くなるはず」と期待して重量を計測しましたが、結果は数グラムの差。誤差レベルでした。
結論:165mmクランクで充実した休日を手に入れる
私が165mmを選んでよかったと思うのは、「今の自分の身体(柔軟性や関節の状態)」を受け入れ、機材の方を合わせることで快適ペダリングが手に入ったことです。クランクの交換は、決して安くはありませんが、快適なペダリングのおかげで充実した休日を毎週手に入れることができるので、充分に価値のある投資です。
もしあなたが、膝の痛みやペダリングの窮屈さを感じながら走っているなら、身体に合っていませんよ、というサインかもしれません。
一人で気ままに、どこまでも走り続けたい。そんなあなたの休日を、ショートクランクは陰ながら力強く支えてくれるはずです。
まずはここから。身体に優しい選択肢
いきなり最高級グレード(DURA-ACE)を入れる必要はありません。まずは手頃なグレードで、その「回しやすさ」を体感してみてください。合わなければ、また戻せばいいのですから。
▼ コストを抑えて「快適」を手に入れる(105グレード)
▼ 最上級クランクで休日を満喫したい方はこちら(ULTEGRA / DURA-ACE)
